空手の組手で世界大会優勝に導いた稽古のコツ|流派ごとのルールも解説 Practice Tips for Leading the World Tournament with Karate Kumite | Explains the rules of each school

「空手の組手」と聞いて、すぐにイメージできるだろうか? 寸止めしているものもあれば、ノックアウトしているもの、頑丈な防具を付けているものなど、様々なイメージが思い浮かぶだろう。

空手の組手は流派によって全く異なる。それぞれの流派やルールの違いを知ることで、流派ごとの空手道における目的や道場選びの判断材料に生かせる。

この記事では、流派ごとの空手の組手の違い、組手の変化の歴史、そして手前味噌で恐縮だが、世界大会優勝に導いた自身の組手の稽古法を説明する。

記事を読めば、意外な組手ルールの事実や組手上達方法などを知り、読者の組手に対する見方が変わるだろう。

 

空手道の組手とは

相手が実際に目の前にいる上で、突き・蹴り・打ち技を相手に当てて行う練習法。

決まった手順に沿って行う組手を「約束組手」、自由に技を繰り出して行う組手を「自由組手」、試合にて勝敗を決める目的で行う組手を「組手試合」という。

組手の練習方法

約束組手

空手道の稽古を積み始めた者が急に自由組手を行うと、思わぬ大怪我や事故を招く恐れがある。まずは、あらかじめ決まった技の組合から、技の原理を学ぶことが、初心者の組手稽古の基礎作りといえる。

たとえば、相手から送り突きがくりだされたら、それを受けて技を返す、といった基本的なことからの練習だ。

この練習を重ねて、反射神経や動体視力・反撃のタイミング・技を受けた時の感触などを身に付け磨くことができる。

自由組手

約束組手の練習をある程度積んだ後は、自由に攻防を繰り広げる自由組手を行う。この練習では約束組手と違い、相手がどのような技をいつ出すのかわからない状態でどんな技をいつ相手に当てるかの鍛錬を積む。いわば、空手道の稽古のなかでも最も実践的で究極の稽古ともいえる。

これまで稽古で磨いてきた突き・蹴り技に加え、ステップ・動体視力・反射神経・相手の隙の見極めなど、全ての技術を瞬間的に発揮しなければならない。

注意点は、一瞬でも気を抜いてはならないことだ。気を抜けば踏み込み足をする時に、足を踏み外して捻挫することもある。また、自分の体に力が十分に入らない状態での突きや蹴りを相手に当てる際に、手首・足首を痛めたりすることもある。

 

自由一本組手

先述の約束組手と自由組手の間に位置づけられる組手の練習方法。これは、約束組手と同様に攻め手と受け手を決めておき、攻め手の技もあらかじめ決めておくが、相手の予期しないタイミングで技のスピードも実践と同様の速さで行う。

一本組手に慣れたら、技を限定せず攻め手から受け手に何らかの技を自由に一本繰り出す練習、さらには二本・三本と攻め手の技を増やして同様に受け手に技を繰り出す練習も行う。

 

 

組手の上達する練習方法とコツ

技の正確さを上げる方法

まず、技は無意識でもきれいに繰り出せるようになるまで、繰り返し練習を積む必要がある。

極端だが身近な例えを挙げる。食事中に箸を使うとき、いちいち箸を使うための指使いなどを意識するだろうか。しないはずだ。子どもなら箸を上手に使えるように意識する必要もあるだろうが、毎日の食事での箸の使いを繰り返すうちに、いずれ意識などしなくても箸は使えるようになる。

空手のみならず、あらゆる武術でも同じことだ。無意識に使えるようになるまで、技を繰り返し練習することが重要となる。

ただし、繰り返し練習を積むのは当然のこと。繰り返し練習しろという教えでは、単なる根性論に過ぎない。

では、どのようにすれば、さらに効率よく技の正確性を高めることができるのか。それは、いくつかあるが、主な内容を挙げる。

常に仮想敵を置く

技の練習の際、実際に相手がいる実践的な組手の練習以外でも、常に相手が目の前にいることを想像して技の練習を行うことである。つまり、いつでも「仮想敵」を置いて練習するのだ。

組手というのは、相手がいて初めて成立する。相手もいないのに技を繰り出すのは意味がない。1人で練習する際も、常に実際に目の前に相手がいることを強くイメージし、「今、自分が繰り出した技を相手が受けたら、相手はダメージを受けるか。それとも、避けられてしまうか」を厳しく想像するべきだ。

これだけで、驚くほど練習のモチベーションが変わる。そして、仮想敵に繰り出した技が、実際に目の前に相手がいる実践練習で通用するかをテストするのである。

 

技を実際にミットや防具に当てる

本来空手道とは、護身術である。護身の際には相手に攻撃をすることもある。実戦では、技は寸止めをしない。技は相手に当てるものだ。

技は当たってこそ意味がある。本当の意味で技の正確性を磨くなら、当てた際の感触や当たりの強度を感じて、技の反省・研究を試みるのだ。当てない技は、実戦では使えないと断言できる。

 

昔、技の練習を寸止めや自分一人のみの練習のみしか積んだことのない武術家が、路上での実戦ばかりしか積んでいない流浪者に野試合でボロボロに負けたという言い伝えがある。

また、江戸時代中期以前の武士の剣術のレベルは、現代の小学生高学年の剣道修行者と同様とも言われる。つまり、武士では大変有名な宮本武蔵も、剣術のレベルは現代の中学生とさほど変わらないということだ。

理由は、江戸時代中期以前の武術の修業には、防具を付けて当てる練習がほとんどなかったからだ。江戸時代後期になって、剣術の修業では防具が用いられ始めた。当てる練習ができるようになってから、剣術のレベルが飛躍的に伸びたのである。

苦手な技への克服方法

苦手な技は、最初は得意な技になるまで頑張って練習する必要はない。まずは、正確に技を当てられるようになるまで、繰り返すのだ。

苦手な技を稽古の大半の時間を使って練習すると、自分の出来なさに憂鬱になり、精神衛生上良くない。

苦手な技を克服するには、技の動きを分割する必要がある。一気に苦手技を繰り返し練習するのではなく、分割された箇所ごとに練習すれば、難しさを感じなくなる。

一番はお手本となる人の動画を撮影して、見本をスロー再生しながら、それを見つつひたすらマネするとよい。何事も学ぶ際は、人のマネをすることから始まる。

技のバリエーションを増やすには?

技は単発ではなく、連続で繰り出すのが一番だ。剣道とは違い、空手道の組手は素手素足で技を出すので、連続が好ましい。単発では、その1発の技が外れた際に隙が生じてしまう。

 

無意識に連続技が出るようになるためにも、自分なりの連続技は事前に用意しておくのだ。

たとえば、(左構えと仮定して)

左送り突き→右捻り突き→再度左直突き→右中段回し蹴り

左中段回し蹴り→左直突き→右捻り突き→左上段回し蹴り

左中段横蹴り→右後ろ回転回し蹴り→左上段回し蹴り

など、ある程度連続技を決めておき、それを練習する。

 

「連続技を決めてしまっては、相手に読まれるのではないのか?」と疑問視する者もいるが、その心配は無用。

流派により異なるが、組手の試合は基本的に3分間であることがほとんどだ。3分間で相手の連続技のパターンを読まれることは多くはない。

また、仮に相手が連続技のパターンを読むことに優れていても、連続技の内容の1つだけ変えればよいのだ。たとえば、自分の決まっている連続技の中の3発目の左中段回し蹴りを、左上段回し蹴りか右中段捻り突きに換えるだけでも、相手には違ってみえるものだ。

スピードを上げるには?

技の正確性だけ磨くだけでは、まだスキル不足だ。技のスピードが遅ければ、相手に避けられてしまう。

技のスピードを速めるには、第一に反復練習だ。反復練習で、スピードは自ずとついてくる。

第二に、突き技なら手から、蹴り技なら足から力を入れて技を出してはならない。突き技なら腰・肩・肘から、蹴り技なら腰・背中から先に技を繰り出すのだ。そうすると、技に余分な力みが入らなくなる。

また、技は全て「重心を相手に当てる」を念頭において技を繰り出すと、余分な力がいらないまま自分の体重ではなかなか生じないパワー以上の威力の技を出せる。

野球を例に挙げる。パワー型のバッターが打つホームランとイチローが打つホームランの違いが明確だ。パワー型のバッターは、ひたすら筋力でホームランを打つ。

しかし、イチローの場合、全身をフルに使い、体重移動を上手にこなして強力なバッティングを実現させているのだ。だから、イチローは筋肉モリモリでないが、ホームランが打てるのである。

 

武術家なら、ブルース・リーが一番わかりやすい例だ。

彼は身長170cm(諸説あり)で、一番重いときの体重が70kgほどとのことだった。

決して重い体重ではない彼が放つ横蹴りの威力は、ヘビー級のファイターをも吹っ飛ばすものだ。映画『燃えよドラゴン』で、ブルース・リーとボブ・ウォールが対決するシーンがある。ブルース・リーの横蹴りでボブが吹っ飛び、吹っ飛ばされたボブの体が、後ろにいた何人ものエキストラに当たる。この衝撃で、エキストラの中には腕の骨を折った者もいたらしい。

蹴り技のメリット・デメリット

蹴り技のメリット

先述のとおり、蹴りは突き技より威力が高く、リーチも長いことだ。

蹴り技の威力は、突き技の威力の約6倍とされている。蹴り技を使えない者は、組手では勝てないといっても過言ではない

 

打撃技で最もリーチが長く威力が高い技は、横蹴りである。これも、ブルース・リーが愛用する技だ。

試合などでは横蹴りを使う選手は少ない。しかし、筆者は非常にもったいないと考えている。相手が技を繰り出そうとする瞬間に繰り出す横蹴りは、非常に有効である。横蹴りは相手との距離を最もとりやすい。相手にとっても、横蹴りを警戒することで、攻めることをためらいやすくなるからだ。

蹴りの練習は時間をかけるべきだ。蹴りが使いこなせれば、勝てなかった相手にも勝てるようになることもある。

 

デメリット

技を出すまでと出した後に体勢を整え終える時間が、突き技よりもかかることだ。どうしても、突き技よりも動作が大きくなり、隙が生じる。

蹴り技を繰り出そうとすると、隙が出ている時間が突き技よりも長いため、相手は攻め入りやすくなるのだ。

また、蹴り技は上半身を後方に倒して片足立ちになるので、バランスが一時的に不安定になる。重心移動が不十分だと、蹴り技の威力が半減するどころか、バランスを崩して転んでしまうこともある。

 

蹴り技のデメリット改善法

下半身の強化

まずは、下半身の筋力を強化することだ。筋力不足だと、蹴り技を繰り出す際の体勢を作り出せない。

下半身の強化する方法はいくらでもある。スクワットや上り坂をダッシュする、イスに座って足におもりを付けて足を上げる。なんでもいい、まずは自分が手軽にできる鍛錬法から始めることが重要だ。

 

重心移動の練習を重ねる

重心移動は、難しく考えなくてもすぐにできる。

一番簡単な意識の仕方は、「相手に寄りかかる」ことだ。つまり、「相手に寄りかかりながら、スナップを利かせて勢いよく蹴りだす」ことを目標にして蹴り技の練習を重ねれば、重心移動もスムーズにできるようになる。

 

インナーマッスルを鍛える

片足立ちを何分もできる人は、共通してインナーマッスルが充実している。アウターマッスルの鍛錬はパワー増強を目的にしているのに対して、インナーマッスルはバランスの強化を目的としている。

インナーマッスルの強化の仕方は、バランスボールに乗って体勢を維持する・腕立て伏せの状態をキープする・腕立て伏せの状態から片手片足を床から離して体勢を維持するなどが挙げられる。

 

腰を低くしながら蹴り技を繰り出す

これは、すぐにできる方法であろう。腰を低くすれば、体勢が安定しやすくなる。蹴り技を繰り出す際は、瞬間的に腰を低くして、腰を相手にぶつけるようにする。

カウンターを上達するには?

カウンター技の必要性

カウンター技ができない者は、大会などで決して優勝できないと断言できる。なぜなら、上級者のレベルになれば、どちらかの選手が一方的に攻撃を浴びせられることがほぼないからだ。カウンターの鍛錬度が勝敗を分けるといっても過言ではない。

カウンターには、3つのタイミングがある。➀後の先、②対の先、➂先の先である。

 

➀後の先

相手の技を捌き、相手の技が出し終えてから相手に技を極めることである。3つの先のなかでは、カウンター技を極めるタイミングが一番遅い。

 

②対の先

相手の技が出し終えたと同時に相手に技を極めることだ。つまり、相手の技が出るタイミングと同じタイミングで、カウンター技を極めるのだ。

 

➂先の先

相手が技を繰り出そうと少しでも動きだした瞬間に、カウンター技を極める。つまり、相手の技が出る前に、カウンター技を極める。

この先の先は、3つの先のなかで最もタイミングが早く、相手が何もできないまま一方的にこちらの技を極めることができる最強の技だ。

 

しかし、先の先は最も難易度が高い。相手の動きを読み切れないと、タイミングをはき違えることになる。

また、頭では相手が技を繰り出そうとすると分かっていても、自分の体が反応しないことがある。上級者でも先の先をまともにできる者は多くない。

カウンター技の上達方法

先の先ができれば最強だと述べた。

では、そのような工夫をすれば、先の先ができるようになるかを説明する。

「反射神経を鍛える」「相手の隙を見極める」「フェイントにも引っかからない鍛錬」の主に3つの練習を重ねる必要がある。

 

反射神経を鍛える

なんといっても、まずは反射神経が悪ければカウンター技そのものができない。

反射神経の鍛え方はたくさんある。

トランプのゲームで鍛えることもできるし、電車のなかでアナウンスが流れた瞬間やトンネルに入る・出る瞬間に手をギュッと握るなどの方法がある。

自分で少しだけでも工夫すれば、普段の生活のなかで反射神経を鍛えることはいくらでもできる。

相手の隙を見極める

隙というのは、無防備な状態である。つまり、相手が無防備である状態に技を極めればよいわけだ。

では、隙のある状態とはどのような状態か。以下に挙げる。

  • ボーっとしている状態
  • 技を繰り出そうとしている瞬間
  • 通常の構えから体勢が変わりだす瞬間
  • 瞬きした瞬間
  • 息を吸っている最中

など。

上記のような瞬間が相手に生じれば、技を繰り出すべきだ。逆をいえば、上記のような状態でなければ、技を繰り出すのは止めておいたほうがいい。すなわち、相手に隙がないのにこちらの技を繰り出せば、相手に技を極められてしまう。

 

上記のような状態を察知したら、一切ためらわず技を繰り出すのだ。一瞬でもためらいがあれば、技のスピードが落ちて相手に動きを読まれる。

フェイントにも引っかからず、相手に技を極める

フェイント技は、相手の隙を誘いだす技だ。突如フェイントを受けると、人間の本能的にどうしても一瞬動きがひるむ。フェイントによってひるんでいる間に、技を極められる。

しかし、フェイント技をしている瞬間も隙なのだ。つまり、相手が何らかの突き・蹴り技を繰り出そうとする瞬間だけでなく、フェイントを繰り出す瞬間にこちらの技を極めるのだ。相手が通常の構えから少しでも異変があれば、即座に技を極めるべきである。

そうすれば、相手が本当の攻撃をしようがフェイントをしようが、惑わされることはない。

組手の構え方

組手試合における構えは、正直にいうと自由でよいのだ。自分が動きやすい・技を出しやすいと感じるなら、自分の好きな構えでよい。

道場や部活の指導員や師範によっては、「前手は相手の顎に近くなるように上げるべきだ。後ろ手はみぞおちを守れ!」と、構え方を決めつける者もいる。

しかし、それは正しいとは言えない教えだ。

先述の構えの欠点は、前手を上げ続けると肩に力が入り、動きが悪くなることもあることだ。さらに、そのような構えに対しては、

「“後ろ手でみぞおちを守れ”というなら、金的や自分の顔面はどうするのか?」

という疑問さえ生じる。

さらに言及すると、「自然の構え」という構えがある。腕を完全に下ろした、いわゆるノーガードの状態だ。指導者によっては、ノーガードなど隙だらけだと批判する者もいる。

しかし、一番リラックスできている状態で、一番動きやすい構えでもある。

 

一番優れた構えなどない。各々が動きやすく攻撃・捌きがしやすい構えを練習や試合のなかで、それぞれが編み出していくべきなのだ

そして、構えは1つだけでなく、様々な構え方を習得し、状況に応じて構え方を変えればよいのだ。

 

筆者の場合、両足を肩幅まで開き、左足を一歩半前に出す。両手の脇は力まない程度に閉める。

前手は基本的に、相手のみぞおちを狙うように置く。ただし、常に前手を動かしておく。これは、動かしている前手で相手へプレッシャーをかけるためだ。相手を惑わす、相手を威嚇する、自分の蹴り技を繰り出しやすくするために、腕を振りやすい状態に保つなどの様々な目的に必要な動きなのだ。

後ろ手は、基本的に自分のあごとみぞおちの間に置く。ただし、これも動かしてもよい。時には後ろ手をあごまで上げたり、へそまで下げたりすることもある。

手のひらは開いておく。握ったまま構えると余計な力みが発生し、スピーディーな動きがとれなくなる。

 

重要なのは、瞬時に攻撃や捌きができるように、常に動きやすく万全な構えをしておくことだ。

自分が劣勢になったときは、構えを変えてみるのも戦法の1つだ。構えを変えるだけで、相手からすれば「目の前にいる敵が変わった」ようにも見えてくるものだ。

筆者の場合、自然の構え(両手を下す)をするときさえある。構えを変えることで戦況が変われば、それでよいのだ。

自然の構えをすることで、「しっかり構えろ!」を怒鳴る指導者がいるが、筆者からしたらそんな指導はナンセンスだ。

フットワーク(ステップ)のコツ

全くフットワークをぜずに攻撃を繰り出すのは、動けない大砲のようなものとブルース・リーが言っていた。

フットワークというと、ピョンピョン上下に跳ねる足の運動だと勘違いする者がいる。

本来のフットワークとは、

  • 攻撃や捌きを繰り出しやすくするため
  • 反射神経を最大限に引き出すため
  • 瞬間的に間合いを詰めたり、離したりしやすくするため

膝を柔らかくしておくことといえる。もちろん、先述の内容だけでなく、他にも様々な目的がある。

 

「フットワークをしていれば、疲れてしまうのではないか」という者もいるが、全くの誤解だ。フットワークをすることによる体力の減少よりも、フットワークをせずに足をほとんど固定した状態でいることのほうが、最終的に闘いで負けるリスクが圧倒的に高いと断言できる。

 

フットワークの基本は、まず膝を柔らかく使えることから始まる。膝の曲げ・伸ばしを柔らかくすること、つまり柔軟体操などで柔らかくする必要がある。

次に、実際に構えた状態から、前・後ろへの移動してみる。最初はゆっくりでよい。

前に移動する際は、構えの状態であらかじめバネの役割として曲げている後ろ足で、床を蹴るように後ろ足を伸ばす。その動作と同時に、前足を前方に踏み込む。前に跳ぶのではない、膝を前に曲げることで、自然と足が前方に瞬間的に移動するのだ。

ステップの際は、常に両足とも踵を浮かせておくが必須だ。踵が床についていると、瞬間的な動作ができなくなるからである。

 

続いて、左右(サイド)へのステップの方法だ。これは、意外にも難しい。左右へのステップがあまりに下手であると、相手に動きが読まれやすい。

ここでは、左構え(オーソドックスタイプ)での説明とする。

どちらかというと、左へのステップのほうが簡単なのだ。左へのステップは、前足となる左足は動かさず、後ろ足となる右足を左に瞬時に移動させる。同時に体も右足の移動に合わせるように右回りをする。

注意事項は、左足を動かさないこと。左足を動かせば、自分の正中線が開いてしまうからだ。

 

右へのステップのやり方は、左足で床を蹴るように左足を伸ばす。同時に、右足は相手から見て45°に位置するように瞬時に置く。

ポイントは、真横でなく、ほんの少し斜め前(相手から見て45°になるように)移動することである。真横に移動すれば、相手との距離が開くからだ。相手との距離を保ちつつ攻撃を繰り出しやすくするには、斜め45°への移動が最善といえる。

 

特に、サイドステップはいつでもできる癖をつけておくとよい。こちらがサイドに動くと、一瞬だが相手の視界からこちらが消えるように相手には感じられるからだ。すると、相手は視界から消えたこちらを探そうとする。その隙にこちらの攻撃を極めるのだ。つまり、瞬間的なサイドステップは一種のフェイント技なのである。

 

また、サイドステップのさらなるメリットは、相手の攻撃や勢いをかわしやすいことだ。たしかに、まっすぐバックステップしても、相手の攻撃をかわすことはできる。

しかし、単なるバックステップは、サイドステップと異なり、相手の視界に居続けることとなる。バックステップで相手の攻撃をかわしたとしても、相手の勢いは止まらない。まっすぐバッステップで最初の攻撃をかわしたとしても、相手が次の攻撃を放ち、相手にとっては追いかけやすい。

つまり、サイドステップは、攻撃のみならず相手の突進もかわすことが可能だ。

 

筆者が参考にしたステップは、ボクシングやフェンシング、また武術でないがヒップホップダンスなどだ。

ボクシング・フェンシングのステップは、大変軽やかで柔らかく、いつでも瞬時に反応しやすい。後ろ足のバネ・前足による相手の懐への瞬間的な踏みこみ・相手を惑わすサイドステップや上半身の揺さぶりなど、学ぶものが多いにある。

意外なのが、ヒップホップのステップが参考になるということだ。ダンスというのは、あらゆる運動のなかで最も運動基本能力が鍛えられる。ダンスができる者は、どの運動にも上手にこなすことができる。

その理由は、リズムと関節の柔らかさだ。

ヒップホップの場合、ダンスの中でもとくに動きが激しい。しかし、その激しい動きのなかでも自分のリズムを見失わない。

当然、ステップも万能だ。どんな不安定な体勢になっても、リズムカルにステップをとっている。

 

2つ目は、関節の柔らかさだ。

ダンスを極めた者は、どのスポーツの選手よりも、関節が抜群的に柔らかい。というよりも、関節が硬いとまともなダンスはできない。

背の高い・リーチが長い相手への攻略法

寸止め空手の場合、先に攻撃を極めた者に得点となるので、背が高くリーチの長い者が必然的に有利となる。

しかし、それ以外の流派の空手の場合、後から攻撃を極めても有効となる。つまり、背が低い・リーチが短いからといって著しく不利というわけではない。むしろ、背が低い・リーチが短い者は、相手からすれば「体が小さいので、攻撃を当てにくい」「サイドに移動されると、視界から消えて見つけづらい」というように見られるのだ。

 

背の高い・リーチが長い相手と対峙したら、真っ直ぐ突っ込むのは極力避けるべきである。変則的なステップやフェイントを駆使しなければならない。

サイドステップを初めとする変則的なステップで、相手の視界に入りづらくする。それにより、相手の攻撃の照準に定まらないようにするのだ。

サイドステップのみならず、自分の構えを変えてみるのも有効だ。たとえば、左構えであれば、右構えに変えてみる。そうすることで、相手にとってはこちらの動きの予測がつきにくくなるのだ。

フェイントで相手の注意を逸らせて、相手の隙を作る。つまり、相手の正常な構えを崩す。その隙に、こちらの攻撃を浴びせるのだ。

上段の突き技のフェイントを仕掛けて、中段の蹴り技を極める。左横蹴りのフェイントを仕掛けて、右中段前蹴りを極める。フェイント技は相手を欺けるならなんでもよい。

組手のルール

流派によって、組手のルールはかなり異なる。たとえば“硬式空手”の試合でも、主催組織が違えば、組手のルールが異なってしまう。

ここでは、それぞれの流派の最大組織が定める組手のルールを紹介する。(ここでは、一般男子の場合とする)

寸止め空手ルール

一般的には、試合時間は3分。延長戦は1分。それでも決まらなければ、先取り一本先取。

手技は1点。中段への蹴り技は2点。上段への蹴りと投げられた・倒れた相手に対する有効打は3点。

得点獲得条件は、相手より先に技を極めた選手のみ。

8ポイント差をつけるか、制限時間が経過した際に相手よりも点数が高いか、相手選手が反則行為を4度行ったら勝ちとなる。

反則行為

  • 過度の接触
  • 腕や足、甲、そけい部、関節に対する攻撃
  • 平手、貫手による攻撃
  • 回転軸が腰より上となる危険な投げ技
  • 負傷を大げさにアピールすること
  • コートから出る行為(場外)
  • 無防備な体勢
  • 不活動(約30秒間双方何もしない)※残り10秒では取られない
  • 逃避行為(残り10秒で勝っているときに相手から逃げる)※反則注意
  • つかみ(両手で相手をつかむ、つかみが即座でない、クリンチ、レスリング、押す)※片手で蹴りをつかんで片手で相手をつかむのは例外的に有効
  • コントロールされてない技(思いっきり殴る行為など)
  • 相手に話す、相手や審判に対する無礼

極真空手のルール

試合時間は3分。

勝ちの条件は、一本勝ち・技あり2本による一本勝ち・判定勝ち。

一本勝ちは2パターンある。

  1. 反則技以外の技で相手選手を3秒以上ダウンさせる、もしくは戦意を喪失させること。
  2. 瞬間的に相手選手を転倒させ、相手選手が床に背中をつけている状態で、中段逆突きをライトコンタクトで極めて、気合いを込めた残心があること。

技ありは、6パターンある。

  1. 反則技以外の技で相手選手をダウンさせて3秒以内に戦闘可能体勢に戻ったとき。または、相手選手が倒れはしなかったが、バランスを崩したとき。
  2. 上段蹴りが極まり転倒やバランスの崩れがなくても、その後に突き技で間合いを制し、気合いが伴う残心があるとき。
  3. 中段蹴りで相手を転倒させ、その後に突き技で間合いを制し、気合いが伴う残心があるとき。
  4. 自分の技で相手を転倒させ、その後に突き技で間合いを制し、気合いが伴う残心があるとき。
  5. 相手の捨て身技をかわし、直後に相手にライトコンタクトの中段逆突きを極め、気合いが伴う残心があるとき。
  6. 有効打で相手が負傷し、審判長の判断で試合場から出て治療が必要とさせたとき。

 

判定

一本勝ちで決まらない場合は、主審1名・副審3名のなかで、3名以上の選手への支持による判定となる。

相手選手が反則・棄権、相手が戦闘不能の状態になれば勝ち。

延長戦

主審1名・副審3名のなかで、3名以上の選手への支持がなければ延長戦となる。

延長戦の時間は大会によって異なることがある。延長戦を2回行っても勝敗がつかなければ、10kg以上の体重差が両選手間にあった場合、体重の軽い選手の勝ち。

体重差によっても差がつかなければ、試し割の枚数によって勝敗を決める。試し割の枚数でも勝敗が決まらない場合、選手の力量・気迫・反則数などによって勝敗を決める。

悪質な反則を除き、反則を4度行ったら負けとなる。

反則

・手技による顔面への攻撃

・金的への攻撃

・頭突きによる攻撃

・背骨への攻撃

・相手選手の首から上か胴体へ手掛けをした場合

・相手選手の手首や足を掴んだ場合

・両手で相手選手を押した場合

・相手を連続して押した場合

・相手選手を抑えた場合

・技の掛け逃げを何度も繰り返した場合

・何度も場外へ逃げた場合

・場外にいた状態での攻撃

・主審の「止め」がかかってからの攻撃

硬式空手のルール

試合時間は3分間。引き分けの際は、延長戦1分間。延長戦でも引き分けの場合は、先取り一本勝負(先に技を極めた選手の勝ち)。

寸止め空手と違い、加点方式を採用。遅れて極まった技でも、主審の止めがかかるまでに極まった技は全て加点する。

判定

・試合時間終了後、点数の高い選手の勝ち。

・一本勝ちが極まった選手の勝ち。

・相手選手の反則負けによる勝ち。

 

一本技

一本技とは、空手道の正しい突き・蹴り・打ち技が充実した気迫と適正な間合いで、相手の面もしくは胴 に的確に極め、相手を完全に制した技である。

一本技は、以下の3パターンである。

 

・足払いや一瞬のみ相手を掴む投げ技で相手を完全に制した状態で、コントロールされた突き・蹴り技が決まった場合

・3本以上の連続技が極まり、その間相手が全く反撃できなかった場合

・空手道の正しい突き・蹴り・打ち技で、相手がバランスを失った・倒れた・戦意を喪失した状態など、試合続行が可能とは言い切れない状態になった場合(ボクシングなどにおけるKO(ノックアウト)・TKO(テクニカルノックアウト)におおよそ該当する)

 

 

技ありとなる技

肘と膝による面(上段)への攻撃以外の技は、安全具の上に極める技であれば、基本的にはなんでも技ありとなる。

ただし、背面への攻撃は全て寸止めによる攻撃のみ技ありとなる。

・手技、背面への寸止めによる攻撃:全て1点

・足技:全て2点

(例)上段への手技2つと中段への足技が極まった:1点+1点+2点=4点獲得

 

※足掛け技は、次の攻撃に繋げることが目的であれば問題ない。相手にダメージを与えるだけが目的のローキックは反則となる。

禁止技

・安全具以外への攻撃

・背面へのフルコンタクトな攻撃

・技ありとなる攻撃以外(関節技や瞬間的でない掴み技やコントロールされていない危険な投げ技)

・罵倒、挑発的言動及び無用な発声など、相手の人格を無視するような言動・態度。

・肘と膝による面(上段)への攻撃

・時間を空費するための行為、極端な場外逃避

・倒れた相手への面(上段)または背面への足技による攻撃。腕でガードしているところへの

足技による攻撃

反則及び失格の条件

・上記の禁止技を行うと反則注意となる。反則注意の宣告があった際は、相手方が技有り(1 点)を獲得する

・1 回目の反則注意を受けた選手が後に再度禁止技及び反則行為を行った際は、相手方が1本を獲得する

・無攻撃警告を受けた選手は10秒以内に技を出さないといけない。10秒以内に攻撃をしないと無攻撃を宣告され、相手方が技有りを獲得する。

・故意に規則を犯した場合、主審の指示に従わなかった場合、極端に興奮して試合続行に有害と認められた場合は、失格となる。

・試合場のラインの外側を出ると、自動的に場外注意となり、相手方は技有り1点を獲得する。

組手の危険性・安全性

「空手の組手って危ないだろうからやりたくない(子どもにやらせるのが心配)」という声をしばしば聞く。筆者の友人にもよく言われることがある。

では逆に聞く。サッカーや野球、バレーボールなど他のスポーツは危なくないのか。筆者からすれば、サッカーや野球、バレーボールの方がむしろ危ないと考えられる。なぜなら、先述の球技などの他のスポーツの多くは安全具がなく、不意にボールが自分の顔面などの急所に当たった方がよほど危険だろう。球技だって事故や大怪我は大いにあり得るのだ。

 

極真空手は別として、寸止め空手(大会による)や硬式空手・剣道では、安全具の装着が義務付けられる。安全具をつければ、不意に急所への攻撃を受けても、安全具によって守られる。理論上では球技より、むしろ安全具をきちんと装着する武道の方が安全といえる。

筆者も防具付き空手道を選んだのは、「痛い」ことが嫌いだからだ。安全を最大限配慮されている武道がよいから、防具付き空手道を選んだのだ。

 

そもそも、スポーツや武道には怪我がつきものである。それを覚悟で皆スポーツや武道の稽古・試合をしているはずだ。

どうしても怪我や事故を避けたいのなら、安全面を最大に考慮したものを選べばよい。特に、実戦武術は安全面への考慮が厳しいといえる。

実戦武術とは、試合がない護身術のことであり、ジークンドーやクラヴマガ・システマ・日本古武術などがそれに充たる。実戦武術は、実戦(ストリートファイト)を想定しているので、効率的に護身できる技を研究する。

たとえば、金的や目・脛(すね)などへの急所への攻撃、合理的な関節技などである。これらの技は、試合では禁止される。禁止されないで試合に使えば、死人が続出する技だからだ。

つまり実戦武術は、急所への攻撃を徹底するので、練習内容は安全面に一番に考慮しなければならない。もちろん練習で急所をフルコンタクトで攻撃などはしない。もちろん試合もない。急所への攻撃や関節技の練習のみならず、逃げ・避けの技など攻撃に頼らない護身術も研究する。

 

武道・格闘技だからといって一概に危険・大怪我必須という先入観を持っているなら、それは大きな間違い。安全に学べる武術などいくらでもある。

組手の変化の歴史

沖縄時代

戦前「最強空手家」と称えられた空手の大家で、日本傳流兵法本部拳法(本部流)の開祖でもある本部朝基によると…

組手そのものは琉球王国時代から伝来していた。しかし、組手にまつわる伝書や伝記などが存在しないという。そのため、当時の組手の様子が現在でも把握できていない。

また、沖縄時代の組手の内容が不明なのは、現存する資料がないだけでない。当時の空手道の稽古が形中心で、組手練習を重視しなかった傾向があったためでもある。当時の稽古は形の他に道具を使った鍛錬稽古、形を分解して行う稽古などであった。

大正・昭和戦前

この時代でも、まだ稽古としては組手よりも形が中心であった。

しかし、この時すでに剣道や柔道などの他武道では、自由組手や試合などが行われていた。

そのため、「なぜ空手道には組手稽古をもっと行わないのか」と不満を募らせた若年層の練習生が多かったという。

そしてこの背景をきっかけに、当時の若年層の練習生らが、独自に組手稽古の練習量を増やし、組手試合も行った。当時、組手試合を独自に行い、後に現代の空手道の組手形式の礎を創ったのが、和道流開祖の大塚博紀、神道自然流の小西康裕、剛柔流の山口剛玄、日本拳法開祖の澤山宗海らである。

 

しかし、組手試合を繰り広げていくことには、沖縄の空手家からは批判されていたこともあった。古来より伝わる形の稽古量を少なくし、形を崩して独自に組手を行うことは、沖縄の空手家にとっては目を疑うものであった。

さらに、空手道を日本本土に最初に伝来させた、松濤館流開祖の船越義珍の高弟である大竹一蔵・坂井賛男らが創設した「大日本拳法研究会」が、空手道とボクシングを兼ね合わせたスタイルで、現在の防具付き空手道の原型を築いたことに、船越は激怒して坂井を破門にしている。

組手の形式に対する反論や対立は、現在の空手道の組手ルールの乱立にも事実上発展させている。

 

戦後

連合国軍最高司令官総司令部 (GHQ) の指令により、文部省から武道禁止令が出され、剣道や柔道のみならず空手道の日本国内での活動は停滞していった。

しかし1952年、サンフランシスコ講和条約発効により連合国軍の占領が解かれると、武道禁止令も解除され、再び空手道の活動ができるようになった。

1954年には、第1回全国空手道選手権大会を開催され、防具付きルールで試合が実施された。1957年、全日本学生空手道連盟が主催した寸止めルールによる第1回全日本学生空手道選手権大会が開催された。

 

組手のルールは統一されないまま、寸止め・フルコンタクト・防具付きなどそれぞれのルールで現在も大会が開催されている。また、表向きは空手としながら、実質的にはムエタイやキックボクシングの技やルールを採用している新たな組織も乱立している。

まとめ

空手の組手には、流派によってルールに大きな差がある。これから空手道をやってみる人は、後々後悔をすることのないよう、それぞれの流派のルールをよく確認しておくことをおすすめする。

大事なことは、自分が通う道場が一番優れた流派と思ってはならない。それぞれの流派に学べるところがある。自分の学ぶ武術を主軸におき、そこから様々な流派の空手道や他の武術の学べるものを吸収して、自分の武術の可能性を無限に広げることが、この上なく上達をする方法の1つと筆者は考える。

 

そして、人それぞれ空手などの武術の稽古の目的は違うと思うが、空手道では組手で勝つことが全てではない。あくまで空手道は護身術なのだ。

試合で勝つことのみならず、護身の際に自分が学んだ技をどう生かすかを考えると、練習にさらに深みが増す。

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