「人類最強」…誰しも一度は誰かと疑問に思い、「最強は〇〇だ」「いや、〇〇に決まっている」と持論を展開したこともあるだろう。
人類最強の者の闘い方や実績を知ると、格闘技ファンには今後の格闘技の試合の見方が、専門的観点から考察できることになる。格闘技を修行する人には、1つの目標や手本と
なり、モチベーションが上がる。
この記事では、人類最強と呼ばれた者の考察と、2017年11月現在の人類最強、人類史上最強の武術・格闘家について分析し、人類最強は熊やライオンなどの猛獣に勝てるかまで推定する。
目次
人類最強とは?
ここでいう人類最強とは、以下の条件で推察していく。
- 1対1でのルールなしの対戦
- 武器の使用禁止
- 戦闘地は100メートル四方で何も障害物がなく、気温20度・湿度40%の環境
ルールがある試合のなかではなく、あくまで実戦での最強とする。
軍人は殺傷を目的として日頃から訓練しているため、世間に知られていないだけで、人類最強に位置付けられる者がいるかもしれない。
しかし、具体的な軍人最強を推定できる記録や戦地での〇〇殺しなどは、証人がいるわけでもないので、この記事では記述を控えめにする。
「人類最強」と呼ばれたor最強にふさわしい格闘・武術家たち
総合格闘技などの大会で優勝・チャンピオンに輝き、一度でも「人類最強」と呼ばれた者を挙げていく。
そして、それぞれの者が人類最強と呼ばれた背景をみながら、本当に最強といえるかを考察していく。
エメリヤーエンコ・ヒョードル
1976年9月28日生まれ。身長182cm、体重104kg。
ロシアの総合格闘家。元WAMMA世界ヘビー級、元PRIDEヘビー級、元RINGS無差別級、元RINGSヘビー級王者。
「なんでもあり」とする総合格闘ルールの様々な大会で、ヘビー級や無差別級で優勝・チャンピオンとなり続けている。これは、事実上人類最強と呼べる。
2010年6月にファブリシオ・ヴェウドゥムに敗れるまで、10年間無敗の記録を作った選手でもある。
総合格闘技の戦績は、36勝5敗1無効試合。
PRIDEのデビュー戦で、K-1のヘビー級世界チャンピオンに4度も輝き、総合格闘団体パンクラスで世界チャンピオンでもあったセーム・シュルトに判定勝ちした。これにより、ヒョードルは一気に注目を集めることとなる。
そして、2004年大晦日に行われた「PRIDEヘビー級統一王座決定戦」にて、アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラとの対戦は、“人類60億分の1を決める闘い”と呼ばれたものだった。
この対戦でヒョードルは勝利し、“人類最強”と呼ばれるようになった。
また2008年には、元UFC世界王者ティム・シルビアに勝利したことで、さらに注目を集め、“人類最強”の称号を不動のものとする。
ボクシングの世界ヘビー級元チャンピオンのマイク・タイソンも、「歴代最強のMMAファイターは、ヒョードルだ」と認めている。
ヒョードルの強さのバックボーンは、柔道・サンボである。
柔道では、ロシア大会で3度も優勝している。
サンボでも、世界大会100kg超級にて3度、全ロシアの100kg超級にて3度、ロシア軍の大会の重量級にてそれぞれ優勝している。
ちなみに、ヒョードルが総合格闘家に転身したのは、経済的な理由だ。柔道で好成績を達成しても、国から補助金がもらえなくなった。格闘技で生活していけるのは、総合格闘家になるのが手っ取り早かったのだ。
また、打撃の強さも尋常ではない。
元々ヒョードルは柔道家である。総合格闘技にて打撃技を本格的に練習し始めた。
しかし、ヘビー級では類まれな踏み込みの速さとスピードを繰り出すスキルを持っている。2005年にPRIDEにて対戦したキックボクシング出身のミルコ・クロコップにも、「打ち負けた」と言わせたほどの実力だ。石井慧の鼻骨もパンチで骨折させ、左のミドルキック一発で藤田和之をノックダウンさせている。
ヒョードルのトレーニング仲間である、K-1ワールドチャンピオンのアーネスト・ホーストにも「打撃だけの練習をさせたら、ヒョードルは間違いなくK-1でも世界チャンピオンになっていただろう」と認めさせた。
強力な連続打撃で相手をダウンさせた後の動きにも、一呼吸置かず瞬時に柔術にて相手を制する技術は、天下一品だ。
さらに、ヒョードルは精神的にもかなりタフだった。
元々生まれつき大人しい性格で、試合中でも動揺したり興奮したりせず、常に冷静でいる。
ディフェンス能力も長けている。専門家の検証によると、試合で1分間に相手から打撃を受ける回数が、全階級でもヒョードルが最も少ないファイターの一人である。
また、ケビン・ランデルマンによるスープレックスを受けた際、普通であれば頸椎を痛めて重傷を負うものだ。しかし、ヒョードルは瞬時に受身でダメージを最小限に抑え、投げられた後は、ケビンを圧倒して勝利した。
ヒクソン・グレイシー
1959年11月21日生まれ。身長178cm、体重84kg。
ブラジルの柔術家、総合格闘家。グレイシー柔術創始者のエリオ・グレイシーの三男。
総合格闘技の試合では、11戦全勝(全てKOかTKOで勝利)。試合数が多くないとはいえ、自身よりも体の大きい相手(193cm100kgのレイ・ズール、高田延彦・船木誠勝らの日本総合格闘家)に勝利している。
UFCで3度優勝している弟のホイス・グレイシーは「兄のヒクソンは、私の10倍強い」とも述べている。
“400戦無敗”の称号を持っているが、これはマスコミが誇張して名付けたもの。ただ、この称号の意味合いは、「ビーチなどでのストリートファイトの闘いも戦績に含めるとすれば、400戦くらいの試合は経験した」と、ヒクソンが修斗の創始者である佐山聡に言ったことで、この称号が付いた。
1994年7月、VALE TUDO JAPAN OPEN 1994に出場。この大会は日本修斗協会が主催したものだ。
1回戦で西良典、準決勝でダビッド・レビキ、決勝でバド・スミスに勝利して優勝。ほぼ無傷で圧倒的な強さを見せつけたことで、注目を集める。
1994年12月、ロサンゼルスにあるヒクソンの道場へ道場破りに来た安生洋二に圧勝。試合開始直後にマウントポジションをとって一方的に連続で殴り続け、その後チョークスリーパーで絞め落とし勝利した。
序盤一方的にヒクソンが殴り続けたのは、他の弟子や安生に、自身の圧倒的な実力を分からせるためでもあったという。
ヒクソンの強さは、グレイシー柔術にある。グレイシー柔術はブラジリアン柔術とも呼ばれている。
グレイシー柔術は、プロレスラーなどとの戦いから修得した技術や柔道の技術、打撃にも対応する組技・寝技を研究して開発された柔術である。
ヒクソンは、相手に打撃を浴びせつつ瞬時にテイクダウンし、マウント状態で攻撃して、グレイシー柔術の絞め技や関節技に持ち込んで勝利するパターンが多い。
ミルコ・クロコップ
1974年9月10日生まれ。身長188cm。体重100kg。
クロアチアのキックボクサー、総合格闘家、元警察官。
PRIDE無差別級グランプリ2006、K-1 WORLD GP 2013、RIZIN無差別級グランプリ2016にて王座獲得。
総合格闘技の試合で立ち技主体のファイター。左ハイキックが得意技とし、多くのKO勝利を積んだ。総合格闘技にて注目を浴びた最初の立ち技系ファイターといわれ、「総合格闘技界の最強ストライカー」ともいわれている。
ミルコは元警察官でテロ対策特殊部隊に所属していて、警察の格闘技の教官も務めた。
キックボクシング・K-1の打撃試合での戦績は、22勝7敗。
総合格闘技での戦績は、35勝11敗2引き分け1無効試合。
ミルコ本人によると、15歳の頃に空手を始めたが、ユーゴスラビア紛争が激化して一度空手から身を引く。紛争が収まった後トレーニングを再開したが、19歳でキックボクシングに転向した。
K-1 GRAND PRIX '99 開幕戦で、K-1四天王の1人であったマイク・ベルナルドにハイキックでダウンを奪った後、連続打撃技を打ち込んで2つ目のダウンを奪い1RでKO勝利した。これにより、ミルコは注目を集め始める。
K-1と猪木軍との対抗戦として開催されたK-1 ANDY MEMORIAL 2001にて、藤田和之と対戦。藤田のタックルに合わせて、膝蹴りを放ち藤田を大量出血させて、TKO勝ちした。
元々この対戦では、藤田の圧勝という下馬評だっただけに、ミルコの勝利はK-1界・プロレス界に衝撃を与えた。
同年大晦日に開催されたINOKI BOM-BA-YE 2001で、プロレスラーの永田裕志と対戦。試合開始21秒後に左ハイキック一発で永田にKO勝利した。これにより、ミルコは“プロレスハンター”と呼ばれるようになる。
2003年3月、K-1 WORLD GP 2003 in SAITAMAで、K-1四天王の一人のアーネスト・ホースにKO勝利して人気絶頂だったボブ・サップと対戦。圧倒的な体格差により、序盤はボブの勢いに押されるも、左ストレートパンチでサップの眼底骨を骨折させKO勝利した。
PRIDE 無差別級グランプリ 2006で、美濃輪育久・吉田秀彦に勝利し、準決勝でヴァンダレイ・シウバと対戦。シウバを右眼負傷させ、最後は左ハイキックで失神KOでの勝利となった。
決勝では、アントニオ・ホドリコ・ノゲイラと対戦。鉄槌やパウンドを繰り返し放ち、勝利し優勝を勝ちとった。
2013年のK-1 WORLD GP FINAL in ZAGREBの決勝で、イスマエル・ロントと対戦。左ハイキックでダウンを奪って、そのまま判定に持ち込み勝利し、K-1では自身初の優勝となる。
2016年、RIZIN無差別級GPに出場。2015年GP王者のキング・モー、把瑠都にKO勝利した。決勝でアミール・アリアックバリと対戦。左フックでKO勝利し、優勝した。
ミルコの闘い方の代表例は、試合開始序盤はローキックで相手の中下段に攻撃を浴びせ、相手が中下段に意識を傾けた隙に左ハイキックでKO勝利する方法だ。
ミルコのハイキックの軌道は、相手の死角から急に飛び込んでくるので、相手にとってはかわしにくい。
相手の攻撃には、ガードよりステップワークや上半身でかわす。これにより、相手の攻撃をもろに食らわず、空にきらす。
アントニオ・ホドリコ・ノゲイラ
1976年6月2日生まれ。身長191cm。体重107kg。
ブラジルの総合格闘家、柔術家。PRIDE初代ヘビー級王者。2008年UFC世界ヘビー級暫定王者。
戦績は、34 勝10敗。
高度な寝技・関節・絞め技が定評で、多くの一本勝ちを収めてきた。それにより、「柔術マジシャン」と評されている。
2000年、日本総合格闘技団体リングス主催のWorld Extreme Fighting 8のヘビー級に出場。決勝でジェレミー・ホーンと対戦し判定勝ちし、優勝。
2001年、初めてPRIDEに参戦する。決勝でヘビー級王座を賭けたヒース・ヒーリング戦にて判定勝ちをして初代王座獲得を果たした。
2008年、UFC世界ヘビー級暫定王座決定戦にてティム・シルビアと対戦。ブラジリアン柔術のギロチンチョークで一本勝ちを収め、王座獲得に果たした。
スティーペ・ミオシッチ
1982年8月19日生まれ。身長194cm、体重111kg。
アメリカ合衆国の総合格闘家。現UFC世界ヘビー級王者(2017年11月現在)。
戦績は16勝2敗。
2016年5月、UFC世界ヘビー級タイトルマッチにて、当時の王者ファブリシオ・ヴェウドゥムと対戦。右フックでKO勝ちをして王座を獲得する。
2016年9月、上記同級タイトルマッチでアリスター・オーフレイムと対戦。試合前半にアリスターの左ストレートによりダウンしたが、パウンドを奪いそのままTKOで勝利し、初の王座防衛に成功する。
2017年5月、上記同級タイトルマッチでジュニオール・ドス・サントスと対戦。TKOにて勝利し、2度目の王座防衛に成功する。
ファブリシオ・ヴェウドゥム
1977年8月24日生まれ。身長193cm。体重108kg。
ブラジルの総合格闘家、柔術家。元UFC世界ヘビー級王者。世界柔術選手権 黒帯ペサディシモ(+97kg)級 2年連続優勝。
2010年6月、総合格闘技でヘビー級世界最強と評されていたエメリヤーエンコ・ヒョードルとの対戦で、初めてタップアウトを奪って勝利した。ヒョードルに10年ぶりの黒星をつけさせたことで、注目を集めた。
2015年6月、UFC世界ヘビー級王座統一戦で、当時の王者ケイン・ヴェラスケスと対戦。序盤は互角の闘いを繰り広げるが、徐々にファブリシオの攻撃が的確にケインに極まり始めた。
3Rでヴェラスケスのタックルをいなし、ギロチンチョークで一本勝ちを収め、王座獲得。
ファブリシオの強さは、ムンジアル(ブラジリアン柔術の世界大会)重量級連覇を成し遂げた高い寝技のスキルだ。ミルコに柔術のコーチとしてチームに招かれるほどでもある。
“人類最強”と呼ばれたヒョードルとケインの2名をKOで勝利しているのも、2017年11月現在のUFC現役選手では、ファブリシオのみである。また、ノゲイラにも寝技でKO勝利している。
2015年のケイン戦では、ファブリシオの寝技のスキルの高さをケインが警戒していた。ケインはファブリシオをダウンさせても、寝技で追い打ちをかけることはせず、ファブリシオを立ち上がらせたのだ。
また、ファブリシオのムエタイの稽古で磨いた首相撲からの膝蹴りも強力だ。元々、ファブリシオはブラジリアン柔術出身で、打撃技はあまり得意でなかった。打撃を克服するために、ムエタイの練習を積み、ムエタイの黒帯も獲得した。
ファブリシオの高い身長を生かして繰り出す膝蹴りは、試合運びを有利に進めやすくなる。
先述のケイン戦でも、打撃戦ではケイン有利かと思われていたが、打撃戦でもファブリシオが劣勢になることが少なかった。
ケイン・ラミレス・ヴェラスケス
1982年7月28日生まれ。身長185cm、体重110kg 。
アメリカの総合格闘家。第15・17代UFC世界ヘビー級王座。2007年世界ノーギ柔術選手権無差別級優勝。
戦績は14勝2敗。
卓越したレスリングテクニック、他の選手よりも圧倒的に高いスタミナ、1012kgのパンチ力を持つ打撃を武器に、UFCデビュー後無敗でヘビー級王座を獲得した。
その圧倒的な強さと体格が類似していることから、“2代目ヒョードル”とも呼ばれている。
2010年2月、UFCでアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラと対戦。
右ストレートパンチでKO勝利。
2010年10月、UFC世界ヘビー級王座統一戦でブロック・レスナーと対戦。
膝蹴りが決定打となり、パウンドでのパンチの連打にてTKO勝利し、王座獲得。
2012年5月、UFCでヒョードルにTKO勝ちしたアントニオ・シウバと対戦。
グランドでの肘打ちにより、アントニオを大量出血に追い込み、パウンドでの左パンチの連打によりTKO勝利。
2012年12月、UFC世界ヘビー級タイトルマッチで、2011年11月での対戦で敗れて王座を奪ったジュニオール・ドス・サントスと再戦。
終始打撃・パウンドにて圧倒し、3-0の判定勝ちで王座を奪還した。試合後のジュニオールの顔は傷だらけで、試合中でもジュニオールの出血でリングを血に染めた。
ケインは、ヒョードルに次ぐ“人類最強”ともいわれている。その強さの秘訣は、主に3つある。
打撃の強さ
1つ目は、打撃の強さが光る。
先述の通り、パンチ力が1tを超える威力。それは、ノゲイラを一瞬でパンチ3発を極めて失神に追い込んだ強さだ。
ヘビー級は、190cm以上の体格の選手が大半で、ケインは決して大柄な選手とはいえない。ブロック・レスナーは193cm、アントニオ・シウバは191cm、それぞれケインより身長も体重も上回る選手だ。
しかし、ケインはこのように自身よりも体格のよい相手を、KOもしくはTKOで勝利している。
パウンドでも寝技で一本勝ちすることより、連続打撃による勝利が目立つ。おそらく、寝技よりも打撃によるKOの方が自信を持つか観客を盛り上げるためであろう。いずれにせよ、打撃技は他の選手より劣らない。
底なしの体力
2つ目に、底なしの体力だ。
ヘビー級の選手は体重が重いので、攻撃のパワーは強い反面、体力の消費が激しい。
しかし、ケインは5ラウンドのマッチでも、フルタイム終了時まで常にフットワークを用いて動き続けられている。特に、2012年のジュニオール戦では、フルマッチで疲弊しきっていたジュニオールに対し、ケインはあまり息も乱さず、軽快に動けていて攻撃も緩めなかった。
ケインが体力負けする試合は、今のところない。
技のスピード
3つ目は、技のスピードだ。
体重が重い選手の方が、技のスピードが速い。しかしケインの場合、ヘビー級とは思えない、ミドル級並みの速さである。特に、ノゲイラ戦では、そのスピードの速さが目立つ。
アリスター・オーフレイム
1980年5月17日生まれ。身長193cm、体重111kg
オランダの総合格闘家、キックボクサー。初代Strikeforce世界ヘビー級王者。K-1 WORLD GP 2010優勝。DREAMヘビー級暫定王座。
戦績は、
キックボクシング:10勝4敗。
総合格闘技:43勝15敗1無効試合。
2007年11月、Strikeforce世界ヘビー級初代王座決定戦で、ポール・ブエンテロと対戦。
膝蹴りをボディに極めTKO勝利。初代王者となる。
2008年大晦日、バダ・ハリとK-1ルールで対戦。左フックでダウンさせ、KO勝利。
2010年12月、K-1 WORLD GP 2010 FINALの決勝で、セームシュルトに勝利したピーター・アーツと対戦。
試合開始1分後、アーツを左右のフックと膝蹴りでリングコーナー際に追い込み、最後は強烈なパンチの連打でKO勝利してK-1トーナメント初優勝。
2017年3月、UFCでK-1 WORLD GP 2001王者のマーク・ハントと対戦。
得意の膝蹴りによってKO勝利。
2017年7月、UFCで当時ヘビー級1位のファブリシオ・ヴェウドゥムと対戦。
苦戦の末、2-0で判定勝ちする。
強靭で大きな肉体から繰り出されるパワーとスピードで、特に打撃技が魅力的なファイター。長い手足を器用に使い、パンチと膝蹴りで多くのKO勝利を掴んでいる。
また、攻撃も正確に相手に極めて、無駄な攻撃による体力の消費や隙をみせることを最小限に抑えるスキルも高い。
ディフェンス技術も長けている。隙が少なく、ガードがとても堅い。2008年のミルコ戦でも高いパウンド技術を見せた。
K-1と総合格闘技のDREAM・Strike Forceにて、ヘビー級王者となっている。
マイク・タイソン
1966年6月30日生まれ。身長180cm、体重109kg。
アメリカの元プロボクサー。WBC世界ヘビー級、WBA世界ヘビー級、IBF世界ヘビー級の王座獲得。WBC世界ヘビー級王座を20歳5か月という史上最年少で獲得した。
戦績は、50勝6敗 2無効試合。50勝のうち44試合がKO勝ち。
ヘビー級では小柄だが、自身よりも大きなボクサーを利き腕でない左でも、相手をガードごと倒す圧倒的なパンチ力が特徴。また、モハメッド・アリに劣らないスピード、正確に相手のガードの間から攻撃を極めるテクニックを持つ。
ディフェンスも高いスキルを持つ。相手の攻撃には、ガードよりスウェイによってかわす。
以下の動画を観ればわかるが、ヘビー級とは思えないパワーとスピードが桁違いだ。
モハメッド・アリ
1942年1月17日― 2016年6月3日。アメリカの元プロボクサー。
1960年ローマオリンピックライトヘビー級優勝。WBA・WBC統一世界ヘビー級チャンピオン獲得。3度のチャンピオン奪取と19度のチャンピオン防衛に成功した。
アリがチャンピオンになるまで、ヘビー級の試合は「攻撃が重いが、スピードが遅い」というのが一般的であった。しかし、アリはヘビー級ながらフットワークや攻撃のスピードが速く、当時のヘビー級では衝撃的なファイトスタイルだった。
「蝶のように舞い、蜂のように刺す」とアリやアリのトレーナーが述べたスタイルで、華麗なフットワークで相手を翻弄し、鋭く速く重い攻撃で仕留める。
特に、アリのカウンター技は光る。相手のジャブに対しても、右ストレートでカウンターを打ち込み、瞬時にノックダウンさせるテクニックは、他の階級の選手でも見られない離れ業と称されている。
以下の動画を観れば、アリのスピードやパンチテクニックの凄さが分かるだろう。
現在の格闘技で、試合前に相手を挑発する映像がよく放送されている。試合前の挑発パフォーマンスは、アリが起源といわれている。
1960年代、ベトナム戦争の徴兵拒否をし、自身のWBA・WBCヘビー級統一王座をはく奪された際に、黒人差別を通すアメリカ社会を批判し続けた。
また1974年10月、当時若手でヘビー級王座となっていた無敗のジョージ・フォアマンに、KO勝利した。このとき、フォアマン圧勝という下馬評を覆したこともあり、「キンシャサの奇跡」と呼ばれた。
インタビュー時に、「俺が最強だ」「俺が最も偉大だ」などと公言することで、世間の注目を集めてボクシングを盛り上げることで自身の収益向上にもつなげていた。
ブルース・リー
1940年11月27日 ― 1973年7月20日。身長171cm、体重65kg(諸説あり)。
香港の武術家。ジークンドーの創始者。
「燃えよドラゴン」などのカンフーアクション映画の脚本・監督・主演を務めたこと、劇中で「アチョー!」の掛け声とともに攻撃を繰り出すのは、特に有名。
幼少期に「ケンカに強くなりたい」との理由で、葉問(イップマン)のもとで詠春拳をマスターする。
ブルースは中国人だけでなく、様々な国の生徒に対して、詠春拳やブルースが研究していた独自の中国武術を教えていた。しかし、古参の中国武術家らは、中国人以外に中国の伝統武術を広めるリーを批判していた。
「白鶴拳の使い手の武術家ウォン・ジャックマンとの決闘に勝てば、ブルースを認める」と申し出た古参の中国武術家らに対して、ブルースは承諾した。
ウォンとの決闘でブルースは勝利したが、3分も時間がかかった勝利にブルースは自身の格闘スタイルを反省した。
決闘の結果から、ブルースは「さらに実践的な武術の研究が必要」と決意し、武術の研究に熱が入った。これがジークンドー創始の礎となる。
ブルースは詠春拳をベースに様々な武術を研究した。空手、柔道、合気道、ボクシング、フェンシング、テコンドーなどから、それぞれの武術から有効だと思える技は積極的に取り入れ、より実践的な武術の構築に励んだ。
特に「実戦」と意識していたので、金的や喉などの急所への攻撃を徹底し、「実戦は6秒以内で終わらせる」ことを目標とし、ジークンドーを創始した。
以下の動画では、ブルースの技のスピードや威力の凄さがわかる。特に、拳を相手につけた状態にもかかわらず相手を吹っ飛ばす「ワンインチパンチ」は、パンチの威力を証明するわかりやすい技だ。
ブルースの公式試合の戦績はほとんどない。しかし、以下で示す通り様々な決闘にて勝利を飾っている。
学生時代、アマチュアボクシングの大会で3年連続香港のチャンピオンであったイギリス人選手を1ラウンドでKO勝利。
映画「燃えよドラゴン」の撮影中、エキストラのなかに本物のギャングがいた。ブルースを倒して名を上げようとするため、ブルースに決闘を申し込んだ。
ブルースはこれらの挑戦を受けて、全て一瞬で倒した。この光景を見た他のエキストラは、ブルースを崇拝に近い形の態度を示し、その後のブルースの指示に素直に従ったという。
アメリカでの全米空手選手権大会のブルースの演武の際、チャック・ノリスを空手トーナメントで勝利したことがあるルイス・デリガドとブルースのスパーリングが行われた。ブルースは終始デリガドを圧倒していたと、ブルースのジークンドー後継者のダン・イノサントがコメントした。デリガド自身もブルースの実力に感服した。
木村政彦
1917年9月10日― 1993年4月18日 身長170cm、体重85kg。
日本の柔道家、プロレスラー。全日本選手権13年連続優勝、天覧試合優勝。昭和11年から昭和25年まで15年間無敗。
人並み外れた稽古内容や柔道スタイルから、「史上最強の柔道家」「鬼の木村」と呼ばれている。柔道家のなかでは決して大きくない体格にもかかわらず、異常な瞬発力、得意とする大外刈りの技のスピード、1日10時間以上の練習量、「負けたら切腹」を自身に課したことから、15年無敗の記録を出した。
世界選手権を何度も優勝し、1984年ロサンゼルスオリンピック無差別で優勝した全日本柔道連盟会長の山下泰裕よりも木村の方が断然強いと、様々な柔道家から評価されているほどだ。
また、木村の母校である拓殖大学の後輩で、極真空手創始者の大山倍達からも、「木村の全盛期であればヘーシンクもルスカも3分ももたないと断言できる」と言われていた。
※ヘーシンク:世界選手権やヨーロッパ選手権を何度も無差別級で優勝し、1964年東京五輪の無差別級で優勝したオランダの柔道家
※ルスカ:世界選手権93kg級で2度優勝し、1972年のミュンヘン五輪では、93kg級と無差別級で優勝したオランダの柔道家
木村は、全日本選手権の前身である日本選士権で3連覇、紀元二千六百年奉祝天覧武道大会で5試合すべてを一本勝ちで優勝する圧倒的な強さを持っている。
戦後の試合でも、兵役により柔道からしばらく離れていたブランクを感じさせないほどで、全日本選手権13年連続優勝を遂げた。
ヒクソン・グレイシーの父であるエリオ・グレイシーと1951年10月に対戦して勝利した。
1か月前に柔道家の加藤幸夫がエリオに敗れたことをきっかけに、対戦が決定したのだ。
木村の大外刈でエリオを倒して腕緘を極めた際に、エリオの腕を骨折させた。しかし、エリオはギブアップせずにいた。
エリオの兄でセコンドを務めたカーロスが、ギブアップしないエリオに代わりリングに上がってタップし、木村のKO勝利となった。
木村の練習量は他の一流の柔道家よりもはるかに多い。先述の通り、1日10時間以上の稽古に加え、他の大学や警視庁、皇宮警察などに出向いて、乱取り稽古に取り組み続けていた。
また柔道以外に、剛柔流・松濤館空手の道場にも通い、打撃技を習得。剛柔流空手で師範代となった。
木村のパワートレーニングは常人を外れたものだった。100kgのベンチプレスを1時間1セットで反復する、練習の最後には腕立て伏せを1000回も行うことを自身に課していた。
そのパワーから繰り出される得意の大外刈りを稽古で行うと、失神者が後を絶たなかったほど激しく、腕緘により脱臼者が相次いだため、講道館からそれらの技を禁じられた。
木村は「寝る時は練習をしていない」と考えた結果、3時間の睡眠時間にし、睡眠中にもイメージトレーニングをしていたという。
日本人は人類最強になれるのか?
日本人が世界最強になれる可能性が0ではない。
人類最強の称号を一度でも得た格闘家に多く共通することは、以下の項目だ。
- 身長180cm以上
- 体重90kg以上
- 欧米人
- 総合格闘技を経験している者
上記を見ると、日本人にはかなり分が悪く見える。日本人は、世界的にも体格が大きい方ではない。総合格闘技のUFCのヘビー級で活躍する日本人もいないことも、世界最強・人類最強に日本人がなりづらいことを物語っている。
しかし、日本人ではないが、香港の武道家のブルース・リーは人類最強かもしれない。
ブルース・リーは身長171cm、体重65kg(諸説あり)と体格が決して大きくはない。だが、ブルースが編み出したジークンドーは、「実戦」なのだ。
ブルースも述べていたが、「ジークンドーにルールはない。我々は命のやり取りをしているのだ。実戦では6秒以内に相手を制しなければならない」ことを最も徹底している。
人類最強を決めるなら、先述の通り試合などのルールはない。実戦のもとで急所への攻撃を常に訓練し慣れている者に有利になりやすい。
ブルースや木村政彦のような、実戦を意識した武術の稽古を重ね、戦地を経験しながら日頃から「いつ相手が攻めてくるかわからない状況での稽古=試合」を積んだ格闘家なら、たとえ日本人でも人類最強に手が届くことはあり得る。
現在の人類最強は?(2017年12月時点)
この話題と後述の「人類史上最強は?」で結論を出すのは、非常に難しく意見が分かれる。
筆者が考える現在の人類最強は、ケイン・ヴェラスケスか戦地を経験し常に実戦に重きを置いた訓練を重ね、「いつ相手が攻めてくるかわからない状況での稽古」=試合も怠らない軍人が最強と思える。
ケイン・ヴェラスケスは、2017年11月現在ではUFCヘビー級で3位だが、2010・2012年で王座となっている。しかも、暫定王座ではなく、王座を2度獲得したのは、ヘビー級史上でケインのみである。
現在は試合に出るのを休止している。しかしケインには、先述の通り大きく3つの抜群な能力を持っている。
- パンチ力1トンを超える打撃パワー
- ヘビー級にもかかわらずミドル級並みのフットワークテクニックとスピード
- UFCの試合でフルラウンドを全力で闘い抜いても疲労が目立たないスタミナ
2015年にケインに勝ったヴェウドゥムにも、ケインはリベンジを達成することができる。ヴェウドゥムが持つ優れた格闘能力もケインに劣らない。
しかし、ヴェウドゥムは2017年で40歳となった。今後ケインがリベンジ戦を行う際は、2018年以降となるので、ケインは36歳、ヴェウドゥムは41歳となる。
年齢が全てではないが、ヒョードルも41歳で引退を表明している。年齢的にもヴェウドゥムに勝てる見込みはある。
UFCヘビー級現王座のミオシッチとは、まだ対戦経験はない。
ここで、ミオシッチとケインを、「パワー」「スピード」「技術」「スタミナ」の4つの面から比較してみる。
パワー:ケインが有利
スピード:ケインが有利
技術:互角
スタミナ:ケインが有利
打撃のパワーは、パンチ力1トン超えのケインが有利といえる。
スピードでも、ミドル級のスピードを持つケインの方が秀でているといえる。
技術では、パウンドはミオシッチの方が優れているようにみえる。打撃技のコンビネーションでは、どちらもあまり差がない。
スタミナではケインが有利。5ラウンド闘い切った後での試合ではケインは負けたことがない。しかし、ミオシッチは、ジュニオール・ドス・サントスに判定負けたことがある。
総合的にみれば、ケイン優勢といえる。
軍人が人類最強に関しては、メディアなどでも報じられず、ネットや書籍でも目立ったものが見当たらないため、何とも言えないところはある。
しかし、ケインのような能力に加え、殺傷を専門的に訓練する実戦稽古、戦地の経験、「いつ相手が攻めてくるかわからない状況での稽古=試合」を常に行っている軍人がいるのなら、その者が人類最強といえる。
いくらケインでも、急所を狙ったり殺傷を専門的に訓練しているわけではない。やはり、殺傷も常に稽古しなければ、いざ戦地で相手を殺す場面となったときに、殺傷するスキルが発揮できない。
試合でも戦地でも、両方の経験を常に重ねている者が最強に近づく。
人類史上最強は?
人類史上最強は、ヒョードルか先述のような軍人だろう。
※軍人のことを述べると、何もデータがなくキリがないので、ヒョードルに関してだけ以下言及する。
PRIDEで王座としての闘いぶりや10年間無敗の記録、そしてヒョードルは元軍人であることから、人類史上最強といえる。ロシア陸軍の消防隊と戦車軍に入隊して曹長まで昇進した。
つまり、殺傷能力の訓練を積極的・定期的に行っているのである。これが、人類最強と呼ばれた他の格闘家との違いである。また、ヒョードルは過去に教官とトラブルとなり、教官を失神させたこともある。
また、人類史上最強を決める際の候補として、中国後漢末期の武将の呂布や項羽、宮本武蔵などが挙げられることがある。しかし、彼らは人類史上最強とはいえない。
宮本武蔵をたとえでだすと、武蔵の剣術のレベルは、現代の小学生の剣道修行者とさほど変わらないレベルと科学的に推定される見方がある。
江戸時代後期以前は、普段の稽古で防具を活用してフルコンタクトで相手に攻撃を極めることがなかった。(一部稽古でも殺す習慣のある部族や団体はいたのかもしれないが)
つまり、普段の稽古では寸止めや仮想敵に対しての稽古がほとんどだったのだ。
江戸時代後期に現代剣道で使われる防具や竹刀などが作られてから、普段の稽古でもフルコンタクトで練習できるようになった。これにより、日本国内の剣術のレベルは飛躍的に伸びたのである。フルコンタクトなどの極めて実戦に近い形での稽古を積む者の方が強い。
したがって、この理論や分析からすれば、呂布や項羽なども現代での剣術家や武術家のレベルではないことになる。
「いつ相手が攻めてくるかわからない状況での稽古での頂点=試合や大会」に10年間王座として居続けた上、兵役にて殺傷を常に訓練していたことから、ヒョードルが人類最強として位置付けられることはあり得る。
人類最強は、熊やライオンなどにも勝てるのか?
結論からいうと、不可能ではない。
熊やライオンと闘う訓練を全盛期のヒョードルが積んでいけば、勝てるといえる。
もちろん、熊やライオンとの闘いは生きるか死ぬかである。いざ猛獣を目の前にすると、腰が抜けて全く動けないこともある。
しかし、「熊殺し」の異名で知られるアメリカ空手家のウィリー・ウィリアムスが、実際に熊を倒した事例もあるので、ヒョードルにできないことはない。
熊やライオンなどの猛獣には本能で闘うことがほとんどで、戦略を立てて人間を襲うことが少ない。
猛獣でも目や鼻は急所である。猛獣を目の前にしても動じない精神力まで磨く訓練、相手を効率よく殺傷する能力の訓練を受けて、猛獣専門の戦闘理論を吸収すれば、猛獣相手でも人間が勝てる見込みはある。
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